「海 ―生命のみなもと―」展観覧記【千返万歌〈第12回〉】

千返万歌
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 上原・若洲が返歌に挑戦! 一方の頭にふと浮かんだ短歌から、返歌の世界が始まります。そしてさらに、2首の世界から思い浮かんだ物語などをノールールで綴る企画です。第12回は上原発・若洲着。文章は若洲の担当です。

千返万歌

鯨また港に入る夢占のその身を深く削る音して
                   上原温泉

極まれるところは昏し深海も陸の極まる樹海も都市も
                  若洲至

*メモ✍
夢占ゆめうら:夢判断。夢で見た内容を何かの予兆と捉えて、以後起こることの吉凶を判断する占い。

文章編:特別展「海 ―生命のみなもと―」展観覧記

 先日、国立科学博物館(東京・上野)で開催中の特別展「海 ―生命のみなもと―」展に行ってきました。

 今回は、その中でも特に筆者が興味を引かれた展示項目を取り上げながら、特別展のポイントについてまとめていきたいと思います。

 なお、展覧会の内容を詳細に記すことが本稿の目的ではないので、詳細が知りたい方はご留意ください。

特別展概要

会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
会期:2023年7月15日(土)~10月9日(月・祝)
チケット:一般・大学生 2,000 円/小・中・高校生 600 円(その他割引あり)
公式HP:https://umiten2023.jp/

特別展構成(公式HPより)第1章:「海と生命のはじまり」
第2章:「海と生き物のつながり」
第3章:「海からのめぐみ」
第4章:「海との共存、そして未来へ」

優れたバランス感覚

 全体を通しての構成からは非常に「均整が取れている」と感じられます。海の歴史が気になる人、生き物が好きな人、人類の知恵や技術が知りたい人、社会問題に関心のある人など、幅広い人がそれぞれ深く興味を持てる内容がうまく配されており、バランス感覚に優れた展示になっていました。

 以前に同館で開催された「深海」展との関連性や連続性が特に意識されており、それを見た方にとってはさらに学びが深まるものとなっていたと思われます。

 以下、筆者が特に興味を持った展示2つについて詳しく書いていきたいと思います。

北の海と南の海――海の色を知る――

 第2章「海と生き物のつながり」の一部を構成する展示です。会場の中ほど、一番大きな展示スペースの一角にあります。日本近海を流れる4つの海流を大まかに分け、暖流の流れる南の海の様子と、寒流の流れる北の海の様子を模型で紹介している展示です。

 北の海と南の海の中の違いを、視覚的に想像したことはありますか? 色鮮やかな南の海の様子は想像しやすいかもしれませんが、北の海を、筆者は想像したことがありませんでした。

 実際に模型を見るとその違いは一目瞭然でした。魚だけでなくサンゴや岩肌までもカラフルで明るい南の海に対して、北の海はパッと見でわかる黒っぽさ。ホッケやニシンなど泳ぐ魚の色合いまでもくろぐろとしているのが印象的でした。

 魚の色はおそらく周りの色に対しての保護色として機能しているはずなので、岩や海への光の入り具合が、環境の色全体に影響を及ぼしているのでしょう。南の海では日光が十分に当たるためにサンゴの生育が可能なため、水面近くに白っぽい石灰質が集まりやすいことが、明るい色合いであることに関わっているのでしょうか。

 会場には空から見た黒潮の写真もあり、それを見ると確かに黒潮が黒いこともわかりました。海の豊かな色彩に気づくことができたのは、筆者にとって新鮮なことでした。

ストランディング

 第3章「海からのめぐみ」の展示の一部です。ストランディングとは、海洋生物が海岸や河川に打ち上げられることを言います。記憶に新しいのは、2023年の1月に大阪湾にクジラが打ち上げられた件ですが、このストランディングと、そこから進められた研究の成果に関してまとめられた展示もありました。

 ストランディングについての予備知識はほとんどなかったのですが、研究上も実は重要な出来事であるそうです。直接生物に触れて調べなくても、その形態(単独か集団か)や時期、打ち上げられた生物の種類などなど外から観察して得られる情報だけでも、海洋生物の知られざる「暮らしぶり」の推測に十分役立つ要素なのだそうです。もちろん直接生物個体を調査することができれば研究の深度はさらに上がり、胃の内容物などからはより詳細なデータが得られることになります。

 ストランディングは文化的にも大きなインパクトのある出来事です。アイヌ文化ではストランディングが、神からの贈り物として捉えられていたと聞いたことがありますが、おそらく海洋に面した生活圏では、昔からおそらく大量の食料が得られる貴重な機会としてだけでなく、思想・文化的な影響を与えてきたことでしょう。

 2023年頭がそうであったように、現代でもクジラやイカをはじめ、アザラシやラッコなど珍しい生物が生活に近い領域に入ってくると、日本では恰好の話題になりますね。名前が付いたり、ヘリが飛んだりしますが、研究という形で社会的以上のインパクトがあることを、筆者は初めて知りました。

全体を通して

 展示内容に工夫が凝らされており、貝塚などの発掘研究成果から、古代の人の生活のありようなどもうかがい知ることができました。

 全体を通して、理科的な予備知識がなくても、① それを補える展示や説明の豊かさがある、② そこからさらに見る人それぞれが想像を働かせながら自由に楽しむことができる――、それが今回の「海」展の優れた点だと感じました。筆者のように、(大別すればの話ですが)いわば「文系」的な観点から物事を見る人ほど、博物館って縁遠いもののように感じられるのかな、という気がしますが、全くそんなことはありませんでした。

 会期は2023年10月9日までです。暑い時期に涼みにゆくのもいいと思います。ぜひ気軽に訪れてみてください😋!

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